鈴江知子のフィリピンだより＜6＞

早いものでもう帰国の日が近づいて参りました。お陰さまで任期の6カ月間を無事に終えられそうです。初めて国外の保健衛生の現状を実際に目にし、日本の生活環境や医療はなんと充実しているのだろうと度々感じました。そして、水のありがたさや地域のつながりの大切さを強く感じました。

体を清潔に保ち、清潔な衣服をまとい、水を飲んで食事・排せつをする。これだけの最低限の生活をするのにも水は最低約20リットル必要とされています。家に水道や井戸がなければ、その分の水を汲みに行かなくてはなりません。水がなければ、清潔が保たれず、奇麗な水を口にもできず、感染症などの危険は高まります。下痢になったとしても、トイレはなく、その排せつ物に混じった病原菌は人を介して広がります。病気にかかっても近くに病院はなく、病院に行くにも家に車はありません。これが、実際の事業地での現状でした。

幾度と事業地を訪れ、そこで暮らす人々に接することで、実際の生活が見えてきました。訪れる前の私の想像とは違っていて、人々はこのような環境でもその土地を離れず、強く明るく謙虚に暮らしていました。情報の限られた環境の中、育成した地域保健ボランティアは健康促進の伝播者となり、地域を守ることに喜びを感じながら活動しています。事業で支援した内容は、彼らの生活を守るためにも本当に最低限の援助だと感じました。

この事業に携わり、開発援助や事業の運営について、また、国際赤十字についてなど本当に多くのことを学ぶと同時に、国際保健要員として多くの課題も見つかりました。このような貴重な経験を糧に今後につなげていきたいと思います。この活動に従事するにあたり、徳島赤十字病院のみなさまをはじめ、本当に多くの方々にご支援いただきましたことを心より感謝申し上げます。