外科(消化器)

外科(消化器)

1. 消化管外科

消化管外科が扱う病気は大きく分けて、腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患があります。腫瘍性病変には癌、GIST(消化管間葉系腫瘍)、良性腫瘍があり、非腫瘍性病変には胃・十二指腸などの潰瘍性疾患、虫垂炎・潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性疾患があり その他として各種ヘルニア、腸閉塞、痔疾患があります。

腫瘍性疾患

消化管外科において治療の対象となる最も多い腫瘍性疾患は癌であり、食道から直腸にかけて各部位において発生します。
各ガイドライン基づき、他の診療科および多職種のスタッフとも密に連携し、患者さんひとりひとりに最適と考えられる治療を提供しています。

食道癌

飲酒及び喫煙が要因で発生し、下咽頭癌、喉頭癌など頭頸部領域の悪性腫瘍と合併しやすいことが知られ、これらと同様に組織型は扁平上皮癌がほとんどをしめます。食道の中では胸部中部食道が好発部位です。

症状

燕下困難が一般的ですが、早期では前胸部のしみる感じなどがあります。

治療

早期発見早期治療が一番有効で、粘膜上皮にとどまる癌では、内視鏡的粘膜切除の対象となります。さらに進行した場合が手術の適応となりますが、周囲臓器への浸潤が疑われる場合は化学療法や放射線療法を行う事があります。切除が可能と判断された場合は手術を行います。手術は右開胸食道亜全摘・胃管再建術・3領域リンパ節郭清が標準術式です。しかし、手術侵襲は過大であり、当科では進行度に応じたリンパ節郭清範囲の縮小や胸腔鏡・腹腔鏡を用いた手術侵襲の縮小をめざしています。

胃癌

胃癌発癌に関してはピロリ菌との因果関係があるといわれています。幽門側に発生する場合が多い傾向にありますが近年ピロリ菌の除菌に伴いより胃の入り口に近い噴門部、食道との境界に発生する癌が増加傾向にあります。

症状

進行癌では吐血・下血による症状、通過障害による症状が出現しますが、早期の場合は無症状のことが多く、上部消化管内視鏡検査で初めて発見される症例が増加しています。

治療

粘膜内癌は多くの場合内視鏡的粘膜切除の対象となります。粘膜下層までに浸潤する早期癌や、一部の進行癌では低侵襲手術として、完全腹腔鏡下胃切除の対象となり、進展範囲により腹腔鏡下胃部分切除、胃分節切除、幽門側胃切除、噴門側胃切除、胃全摘が適応となります。腹腔鏡下手術は術創が小さい、術後排ガスまでの期間が短い、入院期間が7-10日前後と短い、術後癒着が少ないなどのメリットがあり、当科においても積極的に行っています。しょう膜より深部への浸潤等の進行癌では従来の開腹胃切除となり、脾臓、膵体尾部の合併切除、食道の合併切除などが、個々の症例に応じて選択されます。

結腸・直腸癌

結腸癌、直腸癌は食生活の欧米化(高脂肪食の摂取)とともに、近年増加傾向が著明な癌であり、左側結腸すなわちS状結腸癌、直腸癌が多い傾向にありますが、近年では右側の大腸癌も増加しています。

症状

左側結腸では下血が多い傾向にあり、進行とともに腸閉塞症状へ進展します。右側結腸では内腔が広く、便もまだ軟らかいため、腸閉塞症状が出にくい傾向にありますが、いずれの部位でも便潜血反応が早期発見に有用です。

治療

当科では腹腔鏡下手術を積極的に適応しております。腹腔鏡下回盲部切除、右半結腸切除、横行結腸切除、左半結腸切除、S状結腸切除、直腸前方切除、直腸切断術などを行っています。多臓器浸潤癌、巨大腫瘍、腸閉塞症例等の場合は開腹術を選択しています。最近では腸閉塞症例に対して内視鏡下ステント治療後、症状の改善を待ち、手術する場合があります。腹腔鏡下手術の有用性は胃癌の場合と同様であり、結腸・直腸では自律神経温存やリンパ節郭清において、開腹手術よりむしろ視野良好な場合が多いです。胃癌にもいえますが、遠隔転移を伴っており、初診時には切除が困難と判断された場合でも化学療法や放射線治療等を行い、腫瘍を縮小させてからの手術を行うことで治癒切除が可能となることがあります。
原発巣にもよりますが、ほとんどの患者さんは術後7日~14日で退院しています。

消化管間葉系腫瘍(Gastro intestinal stromal tumor:GIST)

以前は平滑筋腫、平滑筋肉腫など粘膜下腫瘍といわれていた腫瘍ですが、近年、消化管の運動調節機能を司るCajal細胞由来の腫瘍であることが判明しました。胃、小腸に多い傾向にあります。特殊免疫染色にてc-Kit陽性を証明する必要がある腫瘍です。良性の場合が多いですが、肝転移、播種性転移をする悪性の場合があります。組織所見で悪性例では核分裂像が著明となります。

症状

胃では上部内視鏡検査時に偶然発見される場合が多く、時に腫瘍頂部の潰瘍形成より出血することがあります。また、胃壁外発育が著明なこともあります。小腸発生のものは下血精査にて発見されますが、小腸の内視鏡検査、画像診断は困難な場合が多く、血管造影にて診断がつくことがあります。

治療

腹腔鏡下胃部分切除あるいは小腸切除など腹腔鏡手術の良い適応疾患です。近年、内視鏡との共同手術を行っており、整容性はもとより低侵襲性、機能温存の観点から有用と考えています。切除が原則ですが、すでに腹膜や肝臓に転移がある場合は化学療法を行う事が多く、化学療法組み合わせることで完全切除も可能となることがあります。

非腫瘍性疾患

治療の対象となる非腫瘍性疾患は胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患、各種ヘルニアなどがあります。

胃・十二指腸潰瘍

PPIの開発、ピロリ菌の除菌などより、胃・十二指腸潰瘍が手術対象となることは少なくなりました。しかし潰瘍穿孔による腹膜炎、内視鏡的止血不能の出血、十二指腸潰瘍の瘢痕狭窄など内科的治療でコントロール不能の場合、外科治療の対象となります。

治療

良性疾患であり、より低侵襲な腹腔鏡下手術の良い適応です。穿孔では腹腔鏡下穿孔部閉鎖・大網充填あるいは被覆術を行います。出血や十二指腸狭窄では腹腔鏡下幽門側胃切除などが適応されます。

炎症性腸疾患

潰瘍性大腸炎・クローン病など難病指定疾患ですが、保存的加療の進歩により、外科治療の対象となることは少なくなっています。しかし中毒性巨大結腸症、保存的治療の効果ない症例、小腸狭窄によるイレウス例などが外科治療の対象となります。腸閉塞で腸管拡張の著明な症例でなければ、やはり腹腔鏡手術の適応となり、結腸全切除も可能です。

虫垂炎

腹腔鏡下手術の最も良い適応と思います。術後第1か2病日には退院可能です。腹腔鏡挿入portより虫垂を無菌的に取り出すため、壊疽性虫垂炎でも創感染が生じることはありません。当科ではほぼ全例が腹腔鏡手術となっています。

その他良性疾患(各種ヘルニア、直腸脱、腸閉塞など)
[ 食道裂孔ヘルニア ]
逆流性食道炎の原因ともなり、内服加療に反応しない場合は、手術適応となります。手術は腹腔鏡下Nissen手術を当科では行っております。
[ そけいヘルニア ]
腹腔鏡下で行い診断の確実性や再発防止、慢性疼痛の予防の観点からTAPP法を当科では主に行っております。ただ腹膜外経路での修復(TEP法)が望ましい場合や、従来通りに鼠径部切開法でメッシュを使用する場合、しない方がいい場合など患者さんにもっとも適した術式を提供するべく、当院では様々な術式に対応しています。日帰り手術も含め患者さんのニーズにあった診療を行っています。
[ 腸閉塞 ]
食べ物や消化液の流れが、小腸や大腸で滞った状態、内容物が、腸に詰まった状態が腸閉塞です。腸が拡張して張ってくるため、おなかが張って痛くなり、肛門の方向へ進めなくなった腸の内容物が、口の方向に逆流して吐き気を催し、嘔吐したりします。手術以外で治ることも多いですが、緊急手術を要する場合は繰り返す場合、悪性腫瘍が原因となっている場合があり、病態に応じて対応しています。
[ 直腸脱 ]
直腸脱とは、直腸が肛門から脱出してくる疾患であり、高齢の女性に多く見られます。
軽症のうちは排便時に一時的に脱出するだけですが、重症化すると脱出したままとなり、出血や痛み、不快感を伴うようになります。また直腸の脱出を繰り返すと、肛門の締まりがゆるくなって便が漏れやすくなってきます。
直腸脱を有する人は、高率で子宮脱や膀胱瘤などを伴うこともあります。主に手術で治しますが、当科では腹腔鏡下手術を積極的に行っています。

表記されていない疾患につきましても消化器外科の専門医が対応しています。

手術統計

消化管外科手術の内訳 2019年(PDF) 胃手術症例 2010-2019年(PDF) 腸手術症例 2010-2019年(PDF)

2. 肝胆膵外科(脾含む)

肝胆膵外科(脾含む)も腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患があります。腫瘍性疾患は癌、転移性腫瘍、良性腫瘍で、非腫瘍性病変には最も手術件数が多い胆石性疾患や各種嚢胞性疾患があります。
肝胆膵外科において治療対象となる疾患は癌であり、肝臓では各臓器癌からの転移性肝腫瘍です。

腫瘍性疾患

肝細胞癌

B型やC型肝炎ウイルス感染者に発生する場合がほとんどです。

症状

症状はほとんどありません。上記感染の経過観察中に発見される場合が大多数です。

治療

3cm以上のものが外科手術の対象となります。それ以下ではラジオ波焼灼術や、血管塞栓術の対象となり、最近では早期発見例が多く、これらの低侵襲的治療の対象(当院では放射線科の担当)となっています。外科手術では従来の開腹肝切除からより低侵襲の腹腔鏡下肝切除も症例を選び行っています。

肝胆管細胞癌

ウイルス感染に関係なく発生します。肝内の小さな胆管より発生します。

症状

初期では無症状ですが、進行すると黄疸、胆管炎による発熱などが出現します。

治療

発見時すでに進行している場合が多く、切除可能症例では開胸下や開腹肝切除(拡大切除含め)の適応となります。

転移性肝腫瘍

胃癌、大腸癌よりの転移性肝腫瘍の頻度が高いです。外科手術の対象となるものは大腸癌がほとんどです。

症状

胃癌、大腸癌術後の経過観察中に発見される場合が多く、ほとんどが無症状です。肝転移を伴った胃癌・大腸癌の場合はそれぞれの臓器に特徴的な症状と、進行例では黄疸、右季肋部の腫瘤の触知などがあります。

治療

大腸癌の場合は、5個以内であれば、分子標的薬剤を含む抗がん剤治療後、積極的に開胸下や開腹肝切除を行っています。肝表面の場合は腹腔鏡下肝切除も施行しています。

胆のう癌

胆石症を伴った場合が多い傾向にあります。前がん状態として胆嚢ポリープも増大傾向にある場合や、1cmをこえるものは腹腔鏡下胆のう摘出術の適応となります。

症状

胆石症に伴う症状のない場合は、無症状です。進行が早く、腫瘤触知、黄疸出現にてやっと発見される場合が多い傾向にあります。胆石症手術時に偶然、比較的早期がんが発見される場合があります。

治療

前述のように、胆石症手術時、比較的早期がんが発見された場合は、進行度に準じて、追加切除(肝床切除、胆管切除、リンパ節廓清)を行います。進行がんで肝などに遠隔転移のない場合は、進行度に準じ、胆嚢とともに肝床切除、肝中央2区域切除などを行います。

肝外胆管癌

最近増加傾向にあります。

症状

比較的早期に黄疸の出現があります。

治療

発生部位により術式が異なります。上部では肝切除・胆道再建術、下部では膵頭十二指腸切除術となります。

膵臓癌

予後不良であり、早期発見が困難な癌です。進行が早く、症状出現時には切除不能の場合が多い傾向にあります。

症状

早期では症状はありません。進行すると黄疸、腹痛の出現や腫大した胆嚢を触知します。

治療

発生部位により手術術式は異なります。頭部では膵頭十二指腸切除術、体部や尾部では膵体尾部切除術の適応となります。

非腫瘍性疾患

胆石性疾患

腹腔鏡手術の対象疾患としては最も多い傾向にあります。

症状

無症状の場合もありますが、脂肪摂取後の右季肋部痛が典型的症状です。発熱、黄疸が出現し、放置すると化膿性胆管炎に移行し重症化する場合があります。

治療

胆嚢内結石の場合は腹腔鏡下胆のう摘出術の適応となります。総胆管結石が併存する場合は、内視鏡的採石術後、炎症の落ち着くのを待ち、腹腔鏡下胆のう摘出術を行っています。総胆管結石が内視鏡的に除去できない場合は、腹腔鏡下あるいは開腹下に総胆管切開採石術を行っています。最近では炎症が軽度の場合は、SILS下胆嚢摘出術(臍部創のみより施行する腹腔鏡下胆のう摘出術)を行っています。

嚢胞性疾患

肝嚢胞、膵嚢胞があります。前者は増大傾向があり、圧迫症状がある場合は腹腔鏡下開窓術の適応となります。後者は膵仮性のう胞と膵管内乳頭粘液性腫瘍IPMNに分けられます。問題はIPMNであり、のう胞が3cmをこえるものは癌の合併を考慮し、手術の対象となります。膵頭十二指腸切除など癌に準じた術式が選択されます。

腹腔鏡下膵体尾部切除術

膵臓は胃の裏側で脊椎前方の後腹膜といった体の奥深くにあります。そのため膵臓の部分的な切除や膵臓にできた腫瘍だけを取り出す核出術のような手術においても、お腹を大きく切開しないと十分な視野がとれないため、創(きず)が他の手術とくらべ大きくなってしまうのです。このような膵臓疾患に対し、当院では腹腔鏡下手術を実施しています。

膵癌取扱い規約 第6版,金原出版,2009 より

膵臓疾患に対する腹腔鏡下手術は、当初国内では保険診療として認定されておらず、ごく一部の施設でのみ施行可能な先進医療の一つでした。
その後、2012年4月の診療報酬改定に伴い、腹腔鏡下膵体尾部切除術は保険適用となりました。膵臓の体部から尾部、あるいは脾臓近くに発生した、嚢胞性疾患や内分泌腫瘍といった良性あるいは比較的悪性度の低い腫瘍が手術の対象となります。腹腔鏡下手術は術創が小さい、入院期間が比較的短いなど、患者さんの体に負担の少ない(低侵襲)手術と言えます。

注)膵臓癌は開腹による手術をお勧めしています。また、腫瘍の存在部位や大きさにより術式が変わります。

手術統計

肝胆膵外科手術の内訳 2019年(PDF)

3. 化学療法

当科では消化管癌化学療法も当科が施行しています。医師のみでなく、化学療法専任薬剤師・看護師と連携し、チームとして診療に当たっています。術後補助化学療法に加え、進行・再発癌に対する化学療法、さらには進行癌に対する術前化学療法、放射線療法等を各癌治療ガイドラインに沿って行なっています。近年は化学療法が大きく進歩しており、初診時に治癒困難と考えられていた場合でも種々の治療を組み合わせることで長期生存や治癒が得られる機会が増えてきました。
またJCOG、JACCRO、JFMC、WJOG等の研究グループに属し、臨床試験にも積極的に参加し世界に発信できるようなエビデンスを構築できるよう常に新しいものを取り入れています。

癌緩和ケア

当院は急性期病院であるため、緩和ケアの主体は外来となります。ガイドラインに沿ったモルヒネ系薬剤による疼痛対策、骨転移への放射線療法などを、主として火曜日の化学療法外来にて行ない、入院を要する場合には、病診連携で緩和ケア病棟のある施設に依頼し、患者さんの不安のないよう、十分なICをとっています。

関連リンク

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